2009.09.09
第3回レポート
実務研修

中国で研修中の佐藤から第3回目のレポートが発信されました。現在は北京市にある華夏正合知識産権代理事務所で実務研修に励んでいます。

青島所員旅行

8月の初旬に、正合事務所の所員旅行に同行させて頂きました。2泊3日の旅程で、場所は日本人には青島ビールでお馴染みの青島です。 青島は北京から列車で半日くらいで、夏の行楽地の定番だそうです。写真は青島郊外にある労山です。 労山は中国道教の発祥の地で、秦の始皇帝や漢の武帝が不老長寿を求めて登ったという言い伝えもあるそうです。

勉強ノート

今回は中国での特許出願の審査における、いわゆる新規事項の追加(中国語では超範囲といいます)の判断についてです。 中国では、出願書類の補正後の内容が、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えてしまう場合に、 その補正はいわゆる新規事項を追加するものとされ、拒絶理由、無効理由となります。 出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲とは、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に文章で記載されている内容、 並びに明細書、特許請求の範囲及び図面から当業者が直接的かつ一義的に特定できる内容を指します。 以下はこの超範囲について審査指南(2009年8月現在のもの)で挙げられている事例の中国語原文と、日本語仮訳です。

(A)

原权利要求限定了一种在一边开口的唱片套。附图中也只给出了一幅三边胶接在一起,一边开口的套子视图。如果申请人后来把权利要求修改成“至少在一边开口的套子”,而原说明书中又没有任何地方提到过“一个以上的边可以开口”,那么,这种改变超出了原权利要求书和说明书记载的范围。

出願当初の特許請求の範囲では一辺が開口したレコードカバーを限定している。図面においても、三辺を接着して一体とした、一辺が開口したレコードカバーの投影図が示されている。もし出願人がその後に特許請求の範囲を「少なくとも一辺が開口したカバー」と補正し、出願当初の明細書において「一以上の辺が開口していてもよい」という言及がどこにもない場合、このような変更は出願当初の特許請求の範囲及び明細書に記載された範囲を超えるものである。

(B)

原权利要求涉及制造橡胶的成分,不能将其改成制造弹性材料的成分,除非原说明书已经清楚地指明。

出願当初の特許請求の範囲が「ゴムを製造する原料成分」に関するものである場合、出願当初の明細書にはっきりと明記されている場合を除き、これを「弾性材料を製造する原料成分」に補正することはできない。

(C)

原权利要求请求保护一种自行车闸,后来申请人把权利要求修改成一种车辆的闸,而从原权利要求书和说明书不能直接得到修改后的技术方案。这种修改也超出了原权利要求书和说明书记载的范围。

出願当初の特許請求の範囲が「自転車のブレーキ」についての保護を求めるものであり、その後に出願人が特許請求の範囲を「車両のブレーキ」に補正した。出願当初の特許請求の範囲及び明細書から補正後の技術方案を直接的に得ることができない場合、このような補正は出願当初の特許請求の範囲及び明細書に記載された範囲を超えるものである。

(D)

用不能从原申请文件中直接得出的“功能性术语+装置”的方式,来代替具有具体结构特征的零件或者部件。这种修改超出了原权利要求书和说明书记载的范围。

具体的な構造に特徴を有する部品または部材の代わりに、当初の出願書類から直接的に得ることができない「機能的な用語+装置」という形式を用いる場合、このような補正は出願当初の特許請求の範囲及び明細書に記載された範囲を超えるものである。

(E)

一件有关合成高分子化合物的发明专利申请,原申请文件中只记载在“较高的温度”下进行聚合反应。当申请人看到审查员引证的一份对比文件中记载了在40℃下进行同样的聚合反应后,将原说明书中“较高的温度”改成“高于40℃的温度”。虽然“高于40℃的温度”的提法包括在“较高的温度”范围内,但是,所属技术领域的技术人员,并不能从原申请文件中理解到“较高的温度”是指“高于40℃的温度”。因此,这种修改引入了新内容。

高分子化合物の合成に関連する特許出願において、当初の出願書類には「やや高い温度」で重合反応が進行するとだけ記載されている。審査官が引用した引用文献に40℃で同様の重合反応が進行すると記載されているのを出願人が見て、出願当初の明細書における「やや高い温度」を「40℃より高い温度」に変更した。「40℃より高い温度」という表現は「やや高い温度」の範囲に含まれているが、当業者には、当初の出願書類において「やや高い温度」が「40℃より高い温度」を指すとは理解できない。それゆえ、このような補正は新たな内容を導入するものである。

(F)

一件有关多层层压板的发明专利申请,其说明书中描述了几种不同的层状安排的实施方式,其中一种结构是外层为聚乙烯。如果申请人修改说明书,将外层的聚乙烯改变为聚丙烯,那么,这种修改是不允许的。因为修改后的层压板完全不同于原来记载的层压板。

多層積層板に関連する特許出願において、その明細書には異なる態様で層状に配置した実施形態が幾つか描写されており、そのうちの一つの構造は外側の層がポリエチレンである。もし出願人が明細書を補正し、外側の層のポリエチレンをポリプロピレンと変更した場合、このような補正は許されない。なぜなら、補正後の積層板は当初記載されていた積層板とは完全に異なるものだからである。

(G)

原说明书中记载了“例如螺旋弹簧支持物”的内容,经修改后改变为“弹性支持物”,导致将一个具体的螺旋弹簧支持方式,扩大到一切可能的弹性支持方式,使所反映的技术内容超出了原说明书记载的范围。

出願当初の明細書には「例えばコイルばね支持体」という内容が記載されており、補正によって「弾性支持体」に変更した場合、具体的なコイルばねによる支持方式を、すべての可能な弾性支持方式に拡大することになる。従って、その反映するところの技術内容は出願当初の明細書に記載された範囲を超えるものである。

(H)

原始申请文件中限定温度条件为10℃或者300℃,后来修改为10℃~300℃,如果根据原申请文件记载的内容不能直接地、毫无疑义地得到该温度范围,则该修改超出了原说明书和权利要求书记载的范围。

当初の出願書類においては温度条件を10℃または300℃と限定しており、その後に10℃~300℃に補正した場合、もし当初の出願書類に記載された内容から直接的かつ一義的にその温度範囲が得られなければ、その補正は出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えるものである。

(I)

原始申请文件中限定组合物的某成分的含量为5%或者45%~ 60%, 后来修改为5%~ 60%, 如果根据原申请文件记载的内容不能直接地、毫无疑义地得到该含量范围,则该修改超出了原说明书和权利要求书记载的范围。

当初の出願書類において組成物のある成分の含有量を5%または45%~60%と限定しており、その後に5%~60%に補正した場合、もし当初の出願書類に記載された内容から直接的かつ一義的にその含有量の範囲が得られなければ、その補正は出願当初の明細書および特許請求の範囲に記載された範囲を超えるものである。

(J)

例如,将“有肋条的侧壁”改成“侧壁”。又例如,原权利要求是“用于泵的旋转轴密封……”,修改后的权利要求是“旋转轴密封”。上述修改都是不允许的,因为在原说明书中找不到依据。

例えば、「リブを有する側壁」を「側壁」と変更する。または、出願当初の特許請求の範囲が「ポンプの回転軸をシールする」であり、補正後の特許請求の範囲が「回転軸をシールする」であるもの。出願当初の明細書の中に根拠を見出せなければ、上記補正はいずれも許されない。

(K)

例如,一件有关多层层压板的发明专利申请,其说明书中描述了几种不同的层状安排的实施方式,其中一种结构是外层为聚乙烯。如果申请人修改说明书,将外层的聚乙烯这一层去掉,那么,这种修改是不允许的。因为修改后的层压板完全不同于原来记载的层压板。

例えば、多層積層板に関連する特許出願において、その明細書には異なる態様で層状に配置した実施方式が幾つか描写されており、そのうちの一つの構造は外側の層がポリエチレンである。もし出願人が明細書を補正し、外側の層であるポリエチレンの層を取り除いた場合には、このような補正は許されない。なぜなら、補正後の積層板は当初記載されていた積層板とは完全に異なるものだからである。

(L)

例如,要求保护的技术方案中某一数值范围为X1=600~10000,对比文件公开的技术内容与该技术方案的区别仅在于其所述的数值范围为X2=240~1500,因为X1 与X2 部分重叠,故该权利要求无新颖性。申请人采用具体“放弃”的方式对X1 进行修改,排除X1 中与X2 相重叠的部分,即600~1500,将要求保护的技术方案中该数值范围修改为X1>1500 至X1=10000。如果申请人不能根据原始记载的内容和现有技术证明本发明在X1>1500至X1=10000 的数值范围相对于对比文件公开的X2=240~1500具有创造性,也不能证明X1 取600~1500 时,本发明不能实施,则这样的修改不能被允许。

例えば、保護を求める技術方案のうちのある数値範囲が600≦X1≦10000であり、引用文献に開示された技術内容と本願の技術方案の相違が数値範囲の240≦X2≦1500だけであれば、X1とX2は部分的に重複しており、この特許請求の範囲は新規性を有していない。出願人が特定の部分の放棄を採用し、X1についての補正を行い、X1からX2と重複する部分すなわち600≦X1≦1500を排除し、保護を求める技術方案におけるその数値範囲を1500<X1≦10000と補正した。もし出願人が当初に記載した内容および従来技術に基づいて、本発明が1500<X1≦10000に至るまでの数値範囲で引用文献に開示された240≦X2≦1500に対して進歩性を有することを証明できず、またX1が600≦X1≦1500の値を取るときに本発明が実施できないことも証明できなければ、このような補正は許されない。