2009.11.30
第4回レポート
実務研修

中国で研修中の佐藤から第4回目のレポートが発信されました。現在は北京市にある華夏正合知識産権代理事務所で実務研修に励んでいます。

国慶節

国は今年の10月に建国60周年の国慶節を迎えました。 60周年というのは人間でいう還暦に当たり縁起が良いということで、今年の国慶節は例年と比べても特に盛大に行われました。 街中の至るところに飾り付けがされて、国を挙げてのお祝いムードが演出されていました。

冬到来

北京では11月の初めに大雪が降り、その後も何度か雪が降っています。 北京は名古屋より寒い、とは聞いていましたが、ここまで早く冷え込むとは思ってもみませんでした。 みんな厚着を着込んでいるので、地下鉄の中はいつにもましてぎゅうぎゅうです。

勉強ノート

補正による新規事項の追加が争点となった拒絶査定不服審判の審決を2つ紹介します。 いずれも審査段階では新規事項の追加を理由に拒絶査定がされましたが、拒絶査定不服審判でその判断が覆った事例です。

(A)FS15867号審決

一、事件の概要

本復審請求は名称を“タバコ型酸素吸引器”とする02109313号の特許出願(以下本出願という)に関するものである。 出願人はX、出願日は2002年3月18日、公開日は2003年10月1日である。
2005年5月13日に国家知識産権局は本出願が専利法33条に規定に符合していないことを理由に拒絶査定をした。 拒絶査定は次の文書に基づくものである:
出願人が2004年8月27日に提出した請求項1-6、明細書1-2頁及び要約並びに2002年3月18日に提出した図面第1頁及び要約書の選択図。
拒絶査定の具体的な理由は次の通りである:
補正後の請求項1の“包装層の前端が密封されている”という記載は、出願当初の特許請求の範囲及び明細書には明確に記載されておらず、 当業者が直接的に導き出すこともできない;補正後の明細書は“包装層の前端が密封されている”という技術的特徴を追加し、 “前端が密封した”という修飾語を追加しているが、これらは出願当初の特許請求の範囲及び明細書に明確に記載されておらず、 当業者が出願当初の明細書及び図面から直接的に導き出すことができない。 従って、出願人による補正は出願当初に開示された範囲を超えており、専利法第33条の規定に符合していない。
出願人X(以下復審請求人という)は、上記の拒絶査定を不服として、2005年8月19日に専利復審委員会に復審を請求した。 この際に、請求人は特許請求の範囲及び明細書の補正を提出しなかった。請求人が復審を請求する主な理由は次の通りである:
出願当初の明細書の実施例に記載された“タバコ状の包装は通常の紙巻タバコの形状を呈する”、“タバコ状の包装は葉巻の形状を呈する”という記載は、 タバコ状の包装の外部形状が通常の紙巻タバコ又は葉巻と同様であることを意味しており、必ずしも包装層の前端が密封されていないことを示すものではない。 かつ、出願当初の明細書及び図面からは、包装層の前端が密封されていることが読み取れる。 従って、出願人が2004年12月16日に提出した明細書、特許請求の範囲は出願当初の明細書および特許請求の範囲に開示された範囲を超えるものではなく、 専利法第33条の規定に符合する。
方式審査の合格を経て、専利復審委員会は当該復審請求を受理し、2005年9月14日に復審請求人に復審請求受理通知書を送付し、 同時に原審査部門に対して前置審査意見通知書を送付した。
原審査部門は本復審請求に対して前置審査を行った。前置審査において、原審査部門は拒絶査定を維持する意見を出した。
専利復審委員会は法に基づいて合議体を発足し、当該復審請求事案について審査を行った。
審査を経て、合議体は本事案の事実が明らかであると認め、法に基づいて本復審請求についての審決をする。

二、審決の理由

  1. 審査文書
    復審請求人が復審請求時に出願書類に対する補正を行っていないため、本審決は拒絶査定の対象となった文書に基づくものである。
  2. 専利法第33条について
    専利法第33条は次のように規定している:出願人はその出願書類に対して補正をすることができる。 ただし、特許及び実用新案の出願書類についての補正は、出願当初の明細書及び請求の範囲に記載された範囲を超えてはならない。
    《審査指南》第二部分第八章第5.2.1節は次のように規定している:出願当初の明細書及び請求の範囲に記載された範囲には、 出願当初の明細書及び請求の範囲に文章で記載されている内容、並びに出願当初の明細書及び請求の範囲に文章で記載されている内容及び 図面から直接的かつ一義的に特定できる内容を含む。
    拒絶査定は次のように指摘している:出願当初の明細書に“タバコ状の包装層2”と記載され、 かつ第2実施形態に“タバコ状の包装は通常の紙巻タバコ型である”と明確に記載され、第3実施形態に“タバコ状の包装は葉巻型である”と明確に記載されている。 上記のタバコの形状は“前端が密封した”という技術的特徴を有しておらず、図1-4からも“前端が密封した”という技術的特徴を読み取ることはできない。 補正後の請求項1の“包装層は前端が密封されている”という記載および明細書に追加した技術的特徴“包装層の前端が密封されている” および追加した修飾語“前端が密封した”は、出願当初の特許請求の範囲及び明細書に明確に記載されておらず、 当業者は出願当初の明細書及び図面から直接的に導き出すことができない。専利法第33条の規定に符合していない。
    合議体は審査を経て、以下のように認める:
    復審請求人が出願日に提出した図面の図2、図4によれば、タバコ状の包装の両側および前端の包装層は連続した切れ目のない二重の実線で図示されており、 工学分野における製図の一般的な規則によれば、二重の実線は通常は一つの“層状構造”を表す。 従って、図2、4に基づいて、当業者はタバコ状の包装の前端が密封された構造を呈していることを直接的かつ一義的に特定することができる。 さらに、出願当初の明細書に“タバコ状の包装層2”と明確に記載され、第2実施形態に“タバコ状の包装は通常の紙巻タバコ型である”と明確に記載され、 第3実施形態に“タバコ状の包装は葉巻型である”と明確に記載されているが;明細書を読めば、“通常の紙巻タバコ型”又は“葉巻型”は、 タバコ状の包装の外部形状が通常の紙巻タバコ又は葉巻と同様の形状であることを意味しており、 通常の紙巻タバコや葉巻と同じように前端の一部が密封されていないことを意味するものではないことが分かる。 言い換えると、本出願における“通常の紙巻タバコ型”又は“葉巻型”という記載と、包装層の前端が密封しているか否かは、必然的な関係がない。
    以上をまとめると、補正後の請求項1の“包装層の前端が密封された”という記載および明細書に追加した技術的特徴“包装層の前端が密封された” および追加した修飾語“前端が密封した”は、出願当初の特許請求の範囲および明細書に明確に記載はされていないものの、 当業者が図面から直接的かつ一義的に上記補正の内容を導き出すことができるので、当該補正は当初の出願書類が開示する範囲を超えるものではなく、 当該補正は専利法第33条の規定に符合するものである。

三、審決

国家知識産権局による2005年5月13日付けの第02109319.X号の特許出願に対する拒絶査定を取り消す。
原審査部門に復審請求人が2004年8月27日に提出した請求項1-6、明細書第1-2頁、明細書の要約および2002年3月18日に提出した図面第1頁、 要約の選択図に基づいて、引き続き審査を行わせる。
復審請求人は本審決に不服があるときは、専利法第41条第2項の規定に基づいて、 本審決を受領した日から三ヶ月以内に、北京市第一中級人民法院へ訴えを提起することができる。

(B)FS17876 号審決

対応日本出願は特開2006-18464号公報を参照ください

一、事件の概要

本復審請求は、名称を“データ処理装置及びその制御方法”とする出願番号第200510080144.3号の特許出願(以下本願という)に関するものである。 出願人はYであり、出願日は2005年6月30日であり、公開日は2006年1月4日であり、優先日は2004年6月30日である。
実体審査を経て、2007年12月7日に、国家知識産権局の原審査部門は当該出願の請求項1,8 および明細書の対応する部分の補正が専利法第33条の規定に符合していないことを理由として拒絶査定をした。具体的な理由は次の通りである:
請求項1の第6-13行、請求項8の第7-14行に追加された“生成装置”、“生成工程”という技術的特徴、これらの技術的特徴を有する技術方案 及び明細書の対応する部分は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲には記載されておらず、 出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された内容から直接的かつ一義的に特定することもできない。 従って、これらの補正は出願当初の特許請求の範囲及び明細書に記載された範囲を超えるものであり、専利法第33条の規定に符合していない。
拒絶査定が対象とした文書は次の通りである:
2005年6月30日に提出された明細書第1,2,8-25,27-37頁、図面第1-15頁及び要約とその選択図、2007年4月29日に提出された特許請求の範囲第2及び3頁、 明細書第5-7頁、2007年9月29日に提出された特許請求の範囲第1頁、明細書第3,4及び26頁。
拒絶査定が対象とした特許請求の範囲は次の通りである:

  1. 印刷に関する印刷コマンドを生成し、その印刷コマンドを印刷装置に出力するデータ処理装置であって: 印刷に用いられる印刷用紙の用紙種別に関する設定項目と、手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目を、 印刷に関する印刷設定項目として使用して、印刷の設定を実施する設定装置と、手動両面印刷を実施することが設定されたときに、 前記設定装置が設定した用紙種別が第1種別である場合に、全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行う印刷コマンドを生成し、前記設定装置が設定した用紙種別が第2種別である場合に、 1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、 全ての印刷用紙に対して実施する印刷コマンドを生成する生成装置を備えるデータ処理装置。
  2. 前記第2種別の印刷用紙が、印刷面の可視像がすでに排出された印刷用紙によって密度の不均一や色の汚染を受ける印刷用紙を含むことを特徴とする、 請求項1のデータ処理装置
  3. 前記設定装置が、設定項目として手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目をさらに有しており、 手動両面印刷を実施することが設定され、かつ手差手動両面印刷を実施することが設定されていないときに、 前記設定装置が設定した用紙種別が第1種別である場合に、前記生成装置が、全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行う印刷コマンドを生成し、前記設定装置が設定した用紙種別が第2種別である場合に、 前記生成装置が、1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、 全ての印刷用紙に対して実施する印刷コマンドを生成し、手動両面印刷を実施することが設定され、 かつ手差手動両面印刷を実施することが設定されたときに、前記生成装置が、1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して実施する印刷コマンドを生成することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  4. 前記設定装置が、設定項目として手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目をさらに有しており、 手動両面印刷の設定項目に関する設定状態に基づいて、 前記設定装置が手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目に対して設定を行うことを禁止することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  5. 前記設定装置が、設定項目として手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目をさらに有しており、 用紙種別の設定項目に関する設定状態に基づいて、 前記設定装置が手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目に対して設定を行うことを禁止することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  6. 通知ウィンドウ出力装置をさらに備えており、前記生成装置が生成を行う際の前記生成装置が生成した印刷コマンドの出力状態に基づいて、 前記通知ウィンドウ出力装置が、新たな印刷用紙を印刷装置の給紙口にセットするようにユーザに提示する通知ウィンドウと、 上面が印刷された印刷用紙を給紙口にセットするようにユーザに提示する通知ウィンドウを切換えて出力することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  7. 前記設定装置が、設定項目として印刷品質に関する設定項目をさらに有しており、用紙種別が第1種別であり印刷品質が精細印刷でない場合に、 前記生成装置が、全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行う印刷コマンドを生成し、 用紙種別が第2種別であり印刷品質が精細印刷である場合に、前記生成装置が、1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して実施する印刷コマンドを生成することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  8. 印刷に関する印刷コマンドを生成し、その印刷コマンドを印刷装置に出力するデータ処理方法であって: 印刷に用いられる印刷用紙の用紙種別に関する設定項目と、手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目を、 印刷に関する印刷設定項目として使用して、印刷の設定を実施する設定工程と、手動両面印刷を実施することが設定されたときに、 前記設定工程において設定した用紙種別が第1種別である場合に、全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行う印刷コマンドを生成し、前記設定工程において設定した用紙種別が第2種別である場合に、 1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、 全ての印刷用紙に対して実施する印刷コマンドを生成する生成工程を備えるデータ処理方法。 出願人(以下では復審請求人という)は拒絶査定を不服として、2008年3月7日に国家知識産権局専利復審委員会に復審を請求し、 補正後の請求項1-8及び明細書第4-7頁を提出した。出願人は、補正後の出願書類は拒絶査定で指摘された、 出願当初に記載された範囲を超える補正の欠陥を解消していると主張した。 補正後の特許請求の範囲の全文は以下の通りである:
  1. 印刷に関する印刷コマンドを生成し、その印刷コマンドを印刷装置に出力するデータ処理装置であって:
    印刷に用いられる印刷用紙の用紙種別に関する設定項目と、手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目を、 印刷に関する印刷設定項目として使用して、印刷の設定を実施する設定装置と、 手動両面印刷を実施することが設定されたときに、 前記設定装置が設定した用紙種別が第1種別である場合に、全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行うように、通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、 前記設定装置が設定した用紙種別が第2種別である場合に、1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して行うように、手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御する制御装置と、 前記制御装置によって制御された印刷ページ順序に基づいて、手動両面印刷の印刷コマンドを前記印刷装置へ出力する出力装置を備えるデータ処理装置。
  2. 前記第2種別の印刷用紙が、印刷面の可視像がすでに排出された印刷用紙によって密度の不均一や色の汚染を受ける印刷用紙を含むことを特徴とする、 請求項1のデータ処理装置。
  3. 前記設定装置が、設定項目として手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目をさらに有しており、手動両面印刷を実施することが設定され、 かつ手差手動両面印刷を実施することが設定されていないときに、前記設定装置が設定した用紙種別が第1種別である場合に、 全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行うように、 前記制御装置が通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、前記設定装置が設定した用紙種別が第2種別である場合に、 1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して行うように、 前記制御装置が手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、手動両面印刷を実施することが設定され、 かつ手差手動両面印刷を実施することが設定されたときに、1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して行うように、 前記制御装置が手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  4. 前記設定装置が、設定項目として手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目をさらに有しており、 手動両面印刷の設定項目に関する設定状態に基づいて、 前記設定装置が手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目に対して設定を行うことを禁止することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  5. 前記設定装置が、設定項目として手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目をさらに有しており、 用紙種別の設定項目に関する設定状態に基づいて、 前記設定装置が手差手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目に対して設定を行うことを禁止することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  6. 通知ウィンドウ出力装置をさらに備えており、前記制御装置が制御を行う際の前記出力装置からの印刷コマンドの出力状態に基づいて、 前記通知ウィンドウ出力装置が、新たな印刷用紙を印刷装置の給紙口にセットするようにユーザに提示する通知ウィンドウと、 上面が印刷された印刷用紙を給紙口にセットするようにユーザに提示する通知ウィンドウを切換えて出力することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  7. 前記設定装置が、設定項目として印刷品質に関する設定項目をさらに有しており、用紙種別が第1種別であり印刷品質が精細印刷でない場合に、 全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行うように、 前記制御装置が通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、用紙種別が第2種別であり印刷品質が精細印刷である場合に、 1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して行うように、 前記制御装置が手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御することを特徴とする、請求項1のデータ処理装置。
  8. 印刷に関する印刷コマンドを生成し、その印刷コマンドを印刷装置に出力するデータ処理方法であって:
    印刷に用いられる印刷用紙の用紙種別に関する設定項目と、手動両面印刷を実施するか否かを示す設定項目を、 印刷に関する印刷設定項目として使用して、印刷の設定を実施する設定工程と、手動両面印刷を実施することが設定されたときに、 前記設定工程において設定した用紙種別が第1種別である場合に、全ての印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記全ての印刷用紙の他方の面に印刷を行うように、通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、 前記設定工程において設定した用紙種別が第2種別である場合に、1つの印刷用紙の一方の面に印刷を行い、 その後に前記印刷用紙の他方の面に印刷する操作を、全ての印刷用紙に対して行うように、 手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御する制御工程と、前記制御工程において制御された印刷ページ順序に基づいて、 手動両面印刷の印刷コマンドを前記印刷装置へ出力する出力工程を備えるデータ処理方法。 方式審査の合格を経て、特許復審委員会は法に基づき当該復審請求を受理し、2008年4月8日に復審請求人に復審請求受理通知書を送付し、 原審査部門にもこれを転送して前置審査を行わせた。原審査部門は前置審査意見書において、 補正後の請求項1,3,7及び8並びに明細書の対応する部分は専利法第33条の規定に符合していないと認定した。具体的な理由は次の通りである
  1. 請求項1には“前記設定装置が設定した用紙種別が第1種別である場合に、・・・、 通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、前記設定装置が設定した用紙種別が第2種別である場合に、・・・、 手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御する”と記載され、請求項8には“前記設定工程において設定した用紙種別が第1種別である場合に、・・・、 通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、前記設定工程において設定した用紙種別が第2種別である場合に、・・・、 手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御する”と記載されている。 しかしながら、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載されているのは: 用紙種別がどのようなものであるかに関わらず、設定装置による設定をすれば、 通常手動両面印刷の制御と手差手動両面印刷の制御のいずれか一方を選択することができるということであって、 第1種別の印刷用紙又は第2種別の印刷用紙といった特定の状況下で設定装置での設定により選択することについて、 出願当初の明細書及び特許請求の範囲は何ら明確ではない。 従って、請求項1及び8の以上の内容は出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載されておらず、 出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された内容から直接的かつ一義的に特定できるものでもない; さらに、請求項1及び8の“用紙種別が第2種別である”及び“手動両面印刷の印刷コマンドを前記印刷装置へ出力する”という記載は、 出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超える概括である。
  2. 請求項3の“前記設定装置が設定した用紙種別が第1種別である場合に、・・・、 前記制御装置が通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、前記設定装置が設定した用紙種別が第2種別である場合に、・・・、 前記制御装置が手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し”という記載も、 前述の理由によって、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えるものである。
  3. 請求項7には“用紙種別が第1種別であり印刷品質が精細印刷でない場合に、・・・、 前記制御装置が通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、用紙種別が第2種別であり印刷品質が精細印刷である場合に、・・・、 前記制御装置が手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御する”と記載されている。 しかしながら、出願当初の明細書及び特許請求の範囲には、 用紙種別及び印刷品質の組合せに基づいて手動両面印刷を制御する印刷方法を概括した方案が記載されているに過ぎない。 従って請求項7の上記特徴を含む具体的な技術方案は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載されておらず、 出願当初の明細書及び特許請求の範囲から直接的かつ一義的に特定できるものでもない。
  4. 明細書における上記請求項に対応する部分も同様に専利法第33条の規定に符合していない。 その後、専利復審委員会は合議体を形成し本案について審理を行った。

上記の経緯を基礎として、合議体は本案の事実が明らかになったと認め、法に基づいて審決をする。

一、審決の理由

1.審査書類について

本審決の対象とする書類は次の通りである: 2005年6月30日に提出された明細書第1,2,8-25,27-37頁、図面第1-15頁及び要約とその選択図、 2007年9月29日に提出された明細書第3及び26頁、2008年3月7日に提出された請求項1-8及び明細書第4-7頁。

1.2.専利法第33条について

専利法33条は次のように規定している。出願人はその出願書類を補正することができる。 ただし、特許及び実用新案の出願書類の補正は出願当初の明細書及び請求の範囲に記載された範囲を超えてはならず、 意匠の出願書類の補正は出願当初の図面または写真に表示された範囲を超えてはならない。 当初の技術的特徴に対して補正によって追加又は削除された技術的特徴が、単に言葉の表現上の相違に過ぎず、 補正後の出願書類から当初の出願書類には記載されていないより多くの技術的情報を公衆に知得させるものではない場合、 このような補正は出願当初に記載された範囲を超える補正と判断すべきではない。本出願の出願当初の明細書の背景技術には以下が記載されている。 従来の二種類の手動両面印刷方法には、通常手動両面印刷方法と、手差手動両面印刷方法が含まれる。 しかしながら、通常手動両面印刷方法を用いて両面光沢紙のように高度な画質が要求される用紙に印刷する場合は、 排出される印刷用紙が互いに積み重なって、印刷面の可視像の密度が不均一になったり、色が汚染されてしまうという問題を生じる。 手差手動両面印刷方法を用いて普通紙のようにそれほど高度な画質が要求されない用紙に印刷する場合は、 ユーザが全ての印刷用紙をその都度プリンタの給紙口に置かなければならず、通常手動両面印刷に比べて、ユーザの利便性に大きな差が生じてしまう。 このことから、本出願は上記の技術的課題を解決するために、使用する印刷装置に最良の印刷品質を提供し、 かつユーザの利便性の良い手動両面印刷機能を提供することが可能な、データ処理装置と、そのデータ処理装置を制御する方法およびプログラムを提供する。 その具体的な実施例においては、設定装置による用紙種別の設定を通じて、 通常手動両面印刷とするか手差手動両面印刷とするかの選択を決定する(本出願の明細書第1-4頁を参照)。 さらに、出願当初の請求項1及び2には、上記特徴を備える技術方案が記載されている。 本出願の具体的な実施例においては、プリンタドライバの印刷ページ順序制御ユニットが行う上/下面印刷順序制御処理のフローが紹介されている。 そのフローによって、印刷時に設定される用紙種別に基づいて、プリンタドライバ130が自動的に手動両面印刷の印刷方法を特定して制御している。 従って、ユーザは手動両面印刷の印刷方法の設定が不明な状況でも、手動両面印刷の適切な印刷方法を実施することができる。 かつ、印刷する用紙種別が両面光沢紙の場合には、必ず手差手動両面印刷を行う必要があることが指摘されている(明細書の第25及び26頁を参照)。

2.1請求項1,3及び8について

本出願の請求項1はデータ処理装置についての保護を請求するものである。 出願当初の請求項1に対して追加された技術的特徴は以下に関するものである: 用紙種別を“第1種別”と“第2種別”に限定し、かつ用紙種別の相違に基づいて、 制御装置が“通常手動両面印刷における印刷ページ順序”と“手差手動両面印刷における印刷ページ順序”をそれぞれ制御する。 請求項1では用紙種別が“第1種別”と“第2種別”に限定されているものの、用紙種別に対する限定は “第1種別”と“第2種別”の二者が互いに異なる用紙の種別であることを表しているに過ぎず、“第1種別”と“第2種別”について具体的には何も限定していない。 従って、本出願の請求項1が出願当初の請求項1に対して実際上追加している特徴は、 用紙種別の相違に基づいて、制御装置に異なる印刷ページ順序の制御を行わせるというものである。
上述したように、本出願の出願当初の明細書及び特許請求の範囲には、印刷する用紙種別の相違に基づいて、 手差手動両面印刷又は通常手動両面印刷を選択して実施することが記載されている。 本出願の請求項1で追加された上記特徴及び当該特徴を含む技術方案は、まさに用紙種別の相違に基づいて、 異なる印刷ページ順序を選択し実施するものである。従って、上記の補正は本出願の出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載されたものである。 さらに、本出願の請求項1は出願当初の請求項1に対して、 “出力装置”に関する“手動両面印刷の対象物に対する印刷コマンドを印刷装置に出力する”という特徴における“対象物”を削除し、 “手動両面印刷の印刷コマンドを前記印刷装置へ出力する”と補正している。 この点について、合議体は次のように考える。当業者の常識及び明細書第4頁の発明の内容の部分における 第6-7行の“データ処理装置は印刷に関する印刷コマンドを生成し、印刷装置に印刷コマンドを出力する”という記載から、 プリンタのデータ処理装置における出力装置の実際の働きは、事前に生成された印刷コマンドを印刷装置に出力することであることが分かる。 従って、請求項1の“出力装置”に相当する技術的特徴の補正は、言葉の表現を単に変更しただけであって、実質的な内容については何ら変更をしていない。 従って、このような補正は出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えるものではなく、専利法第33条の規定に符合する。
同様の理由で、請求項3及び8の補正も、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えるものではなく、専利法第33条の規定に符合する。

2.2請求項7について

本出願の請求項7は出願当初の請求項7に対して、用紙種別、印刷品質及び印刷ページ順序についての限定を追加している。 そのうち、用紙種別は“第1種別”と“第2種別”にそれぞれ限定しており、印刷品質は“精細でない印刷”と“精細印刷”にそれぞれ限定しており、 印刷ページ順序は“通常手動両面印刷”と“手差手動両面印刷”にそれぞれ限定している。 さらに、“用紙種別が第1種別であり印刷品質が精細印刷でない場合に、・・・、 前記制御装置が通常手動両面印刷における印刷ページ順序を制御し、”及び“用紙種別が第2種別であり印刷品質が精細印刷である場合に、・・・、 前記制御装置が手差手動両面印刷における印刷ページ順序を制御する”ことを示している。 請求項7においては用紙種別をそれぞれ“第1種別”と“第2種別”に限定しているものの、このような用紙種別に対する限定は “第1種別”と“第2種別”の二者が互いに異なる用紙の種別であることを表しているに過ぎず、“第1種別”と“第2種別”については具体的に何も限定していない。 従って、請求項7が出願当初の請求項7に対して実際に追加している技術的特徴は、用紙種別と印刷品質の要求に基づいて、 異なる印刷ページ順序を選択して実施するということである。
本出願の明細書の具体的な実施例の部分によれば、本出願は用紙種別に基づいて手差手動両面印刷を選択して実施するだけではなく、 例えば、用紙種別以外の印刷設定における、印刷用紙に付着する記録剤の印刷状態に関する特殊な印刷設定に基づいて、 例えば、印刷品質が“高速(低品質)”よりも高い“精細(高品質)”である場合に、手動両面印刷の印刷方法として、 手差手動両面印刷を選択して実施することができる。 さらに、印刷する用紙種別と印刷品質の組合せに基づいて、手動両面印刷の印刷方法として、手差手動印刷を選択して実施することができる。 このような構成においては、例えば、印刷用紙が“普通紙”であり印刷品質が“高速”よりも高い“精細”の場合に、手動両面印刷の印刷方法として、 手差手動両面印刷を選択し実施することができる。これとは逆に、印刷用紙が“普通紙”であって、印刷品質が“精細”よりも低い“高速”である場合に、 手動両面印刷の印刷方法として、通常手動両面印刷を選択して実施することができる(明細書の第26-27頁参照)。 すなわち、本出願の出願当初の明細書には、印刷品質/用紙種別及び印刷品質の組合せに基づいて、 手差手動両面印刷又は通常手動両面印刷を選択して実施すること、かつ印刷品質の要求が高い場合に、 手差手動両面印刷が選択され、印刷品質の要求が高くない場合に、通常手動両面印刷が選択されることについての情報が記載されている。 本出願の請求項7の補正によって追加された上記技術的特徴を含む技術方案は、まさに明細書において開示されたこれらの情報に基づいてなされた補正である。 従って、請求項7の補正は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えるものではなく、専利法第33法の規定に符合している。

2.3明細書について

同様の理由で、明細書の対応する補正も出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えておらず、 専利法第33条の規定に符合している。
以上をまとめると、本案の合議体は、本出願の請求項1,3,7及び8の補正並びに明細書の補正は、いずれも専利法第33条の規定に符合していると認める。

二、審決

国家知識産権局専利局による2007年12月7日付けの本出願に対する拒絶査定を取り消す。 国家知識産権局専利局の原審査部門に、復審請求人が2005年6月30日に提出した明細書第1,2,8-25,27-37頁、図面第1-15頁及び要約とその選択図、 2007年9月29日に提出した明細書第3及び26頁、2008年3月7日に提出した請求項1-8及び明細書第4-7頁を基礎として本特許出願に対して引き続き審査を行わせる。
本復審請求の審決に不服がある場合、専利法第41条第2項の規定に基づいて、 復審請求人は本審決を受領した日から三ヶ月以内に北京市第一中級人民法院に訴えを提起することができる。