2012.12.04
第2回レポート
実務研修

アメリカで研修中の河崎から第2回目のレポートが発信されました。

ワシントンの冬

 11月中旬、気が付けば、もうすぐ冬です。11月のワシントンは寒いです。 名古屋育ちの私の感覚では、この寒さは既に冬ですが、まだまだ寒くなるのでしょうか・・・。真冬が心配です。

 しかし、冬といえばクリスマスです。この前ハロウィンが終わったばかりなのですが、街はもうクリスマスムード一色です。 USPTO(米国特許商標庁)にも、巨大なクリスマスツリーが登場しました。アメリカの人たちは、本当に、大きくて派手なものが大好きです。

研修レポート

先願主義の導入について
2013年3月16日に、アメリカの特許審査が、先発明主義から先願主義に切り替わります。 先願主義に関する規則案では、先願主義(新法)は、3月16日以降を有効出願日とするクレームを含む、 もしくは、当該クレームを過去に含んでいた出願または特許に対して適用されることとされています。

したがって、3月16日より前の日本出願に基づく優先権を主張して、 3月16日以降に米国出願をする場合には、以下の場合によって、適用される法律が異なります。

  1. 米国出願の全てのクレームが日本出願でサポートされている場合
  2. 米国出願の一部のクレームが日本出願でサポートされていない場合

(i.)の場合には、先発明主義(旧法)が適用されます。
(ii.)の場合には、先願主義(新法)が適用されます。 なお、(ii.)の場合には、全てのクレームに対して先願主義が適用されるので注意が必要です。

また、先発明主義が適用されている親出願に対して、一部継続出願(CIP)を行う場合には、一部継続出願には先願主義が適用されます。

以上の通り、2012年3月16日以降においても、上記(l.)の場合には現行法が適用されます。
したがって、次は、現行法の102条、103条について、実際にあった案件を紹介させていただきます。

下図の事実関係において、US出願Xが、US出願A及び文献Bから自明である(103条)との最初の拒絶理由を受けました。 この場合、どのような応答が可能でしょうか?

まず、拒絶理由を構成する各文献について検討してみます。

  • 文献B
    文献Bは、US出願Xの日よりも1年以上前に公開されています。したがって、文献Bは、102条(b)の引用文献です。
  • US出願A
    US出願Aは、US出願Xの日前1年以内に公開されていますので、102条(b)の引用文献にはあたりません。
    審査においては、最初は、優先権の有無にかかわらず、US出願Xの出願日がその発明日として認定されます。 US出願Aは、US出願Xの発明日(つまり、出願日)よりも前に公開された他人(US出願Xとは異なる発明者)による発明ですので、 102条(a)の引用文献にあたります。
    また、US出願Aは、US出願Xよりも先に他人(US出願Xとは異なる発明者)によって出願され、 その後、公開されていますので、103条(e)の引用文献にもあたります。
    まとめると、US出願Aは、102条(a)及び102条(e)の引用文献にあたります。

    したがって、引用文献A及び文献Bに基づく103条の拒絶理由は、拒絶を受けた時点では妥当ということになります。

(応答方針)
US出願AとUS出願Xは、共に丙に譲渡されています。 したがって、103条(c)の適用(US出願Aの引用文献からの除外)を受けることを検討したいところです。 しかしながら、103条(c)は、102条(e)の引用文献には適用されますが、102条(a)の引用文献には適用されません。
 そこで、US出願Xの優先権を活用することを考えます。具体的には、優先権証明書の翻訳文等の提出を行って、優先権を有効化します。 これによって、US出願Xの発明日が、JP出願Yの日まで遡ります。 すると、US出願Xの発明日がUS出願Aの公開日よりも先となりますので、US出願Aは102条(a)の引用文献としては不適格となります。 その結果、US出願Aは、102条(e)の引用文献としてのみ適格となります。
 したがって、US出願A(すなわち、102条(e)の引用文献)について、103条(c)の適用が可能となります。 103条(c)の適用を受けることで、US出願Aが引用文献として不適格となり、拒絶理由が解消します。